4%ルールは過去150年で通用したか:30年もったのは97.8%、尽きたのは1929年と1960年代後半の開始だけ
貯めたお金を毎年4%ずつ取り崩す「4%ルール」を、1871年からの米国株の実際の値動きで検証しました。取り崩し率と期間ごとに資産が尽きなかった割合、尽きた時期、定率で取り崩す場合の違いをまとめています。
公開 つみとり運営事務局
「4%ルール」は、退職時の資産の4%を1年目に引き出し、2年目以降は物価に合わせて同じ実質額を引き出し続けるという取り崩しの目安です。2,000万円なら年80万円(月6.7万円)にあたります。1871年からの米国株(S&P500)の月ごとの値動きで、この目安が実際にどこまで通用したかを検証しました。
取り崩し率と期間ごとの結果
S&P500・配当込み・物価上昇分を差し引いた実質値。1871年から開始月を1か月ずつずらしたすべてのパターン。最初の残高に対する率で、毎年同じ実質額を引き出す。
| 毎年の取り崩し率 | 2,000万円なら年額 | 20年もった割合 | 30年もった割合 | 40年もった割合 |
|---|---|---|---|---|
| 3% | 60万円 | 100% | 100% | 99.9% |
| 3.5% | 70万円 | 100% | 99.7% | 99.7% |
| 4% | 80万円 | 99.8% | 97.8% | 94.9% |
| 4.5% | 90万円 | 99.0% | 92.9% | 85.0% |
| 5% | 100万円 | 94.4% | 83.6% | 76.5% |
| 6% | 120万円 | 82.3% | 70.8% | 58.8% |
65歳から95歳までの30年を考えるなら、30年の列が目安になります。4%から5%へ1ポイント上げただけで、尽きるケースは2.2%から16.4%へ7倍以上に増えます。取り崩し率は、少しの違いが結果を大きく分ける数字です。
4%で尽きたのは、2つの時期に始めたケースだけ
30年で資産が尽きた33パターンを開始時期で分けると、2つの時期に集まっています。
| 取り崩しの開始時期 | 尽きたパターン | 尽きるまでの最短 |
|---|---|---|
| 1929〜1930年 | 13 | 16年8か月 |
| 1965〜1969年 | 20 | 24年6か月 |
1929年に始めたケースは、直後の大恐慌で株価が大きく下がったところで引き出しを続けたため、残高が回復できませんでした。1960年代後半に始めたケースは、1970年代の高い物価上昇で実質の値動きが長く低迷しています。どちらも「取り崩しを始めた直後の数年が悪かった」という共通点があります。
始めた直後の数年が結果を決める
取り崩しでは、同じ平均リターンでも、悪い年が最初に来るか後に来るかで結果が変わります。残高が少ないうちに値上がりしても取り戻せる額が小さいため、序盤の下落の影響がそのまま残ります。
開始時期ごとに「30年もった最大の取り崩し率」を計算すると、差がはっきり出ます。
| 取り崩しの開始 | 30年もった最大の率 |
|---|---|
| 1929年9月(いちばん悪かった月) | 3.08% |
| 1966年1月 | 3.84% |
| 1973年1月 | 4.23% |
| 1990年1月 | 8.46% |
| 1982年1月 | 12.21% |
| すべての開始月の中央値 | 7.44% |
中央値では7%を超える率でも30年もっています。4%ルールは「ふつうの時期」ではなく「悪かった時期」に合わせた目安です。
2000年に始めたケースは、まだ途中
1995年以前に始めたケースまでは、30年の結果が出ています。それより後はまだ30年たっていません。2000年1月に4%で取り崩しを始めたケースは、2025年末(約26年)の時点で、残高が最初の18%まで減っています。
2000年代はITバブルの崩壊とリーマン・ショックが続き、序盤の下落が大きかった時期です。この先の相場次第で、1929年・1960年代後半に並ぶ悪い時期になる可能性があります。
毎年の額を固定しない「定率」の取り崩し
毎年、その時点の残高の4%を引き出す方法(定率)なら、資産が尽きることはありません。そのかわり、相場が悪い年は使える額が減ります。
| 定率4%の30年間 | 最初の年を100としたとき |
|---|---|
| 引き出し額がいちばん少なかった年(中央値) | 78 |
| 同じく、悪いほうから10%の時期 | 45 |
| 同じく、いちばん悪かった時期 | 23 |
定額は「使える額が決まっているが、尽きる可能性がある」、定率は「尽きないが、使える額が年によって変わる」方法です。年金で生活費の大部分をまかない、取り崩しを旅行や趣味などに使う場合は、定率のほうが向いています。
よくある疑問
Q. 日本で投資する場合も同じ結果になりますか?
この検証は米国株をドルで見た結果で、円とドルの為替の動きは入っていません。円で生活する場合は、為替の上下が加わります。また、物価は米国の消費者物価で調整しているため、日本の物価とは動きが異なります。数字は目安として使ってください。
Q. 株式100%でなく、預金と組み合わせたらどうなりますか?
この記事の検証は株式100%です。数年分の生活費を預金で持ち、相場が悪い年は預金から使うようにすると、下落した株を売らずに済み、序盤の下落の影響をやわらげられます。生活防衛資金の考え方は「投資の前に残す生活防衛資金はいくら?」にまとめています。
Q. 手数料や税金を引くとどうなりますか?
検証には手数料も税金も入っていません。年0.1%台のインデックスファンドなら影響は小さいですが、年1%以上の商品では、尽きる時期が早まります。新NISAの口座で運用していれば、取り崩すときの運用益に税金はかかりません。
前提とデータ
- データ:Robert Shiller 教授が公開している S&P500 の株価・配当・消費者物価(1871年〜)。2024年10月以降は S&P500 連動ETFの配当込み価格と米国の消費者物価でつないだもの。2025年12月まで。
- 配当はすべて再投資し、物価の上昇分を差し引いた実質値で計算。
- 取り崩し:最初の残高×率÷12を毎月の初めに引き出し、残りをその月の値動きで運用。引き出す額は実質で一定(物価に合わせて増える)。
- 開始月を1871年1月から1か月ずつずらしたすべてのパターン(20年:1,619、30年:1,499、40年:1,379)。
- 定率:毎年の初めに、その時点の残高の4%を年額とし、12か月に分けて引き出す。
- 株式100%・ドル建て。為替・手数料・税金は含みません。過去の結果は将来を約束するものではありません。